どうしても採用されたくて、やってはいけないとわかっていても、スキルや経歴を盛ってしまった。
そんなケースが、派遣の現場には実際に存在します。
さらに言うと、派遣会社側が採用のためにスキルや経歴の詐称を持ちかけてくることも、実際にありました。
私はこれまで約30年、40社以上の派遣先で働いてきました。
その中で、経歴詐称・スキル詐称をした人を何人も目の当たりにしてきました。
実は、私自身も派遣会社に勝手に年齢を詐称されたことがあります。
この記事では、私が実際に見聞きした体験談をもとに、詐称がどんな結末を招くのかをお伝えします。
スキルシートの書き方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
派遣のスキルシートとは?書き方と登録時のコツを40社経験者が解説【体験談あり】
派遣でよくある詐称・盛りの種類
派遣の現場で見てきた詐称には、大きく3つの種類があります。
① スキル詐称
「Excelが使える」「フォトショップが使える」など、実際には使えないソフトや技術を使えると申告するケース。
スキルシートに書いてしまえば採用されやすくなりますが、実務では即バレます。
② 経歴詐称
職歴の内容や勤務期間を実際と違う形で申告するケース。
「スーパーのレジ打ち10年の経歴なのに、経理5年」というような話も、実際にありました。
③ 年齢詐称
2007年10月の雇用対策法改正により、求人募集での年齢制限は原則として法律で禁止されています。
ただ、現場の実態はそう単純ではありません。
派遣先から「できれば若い人で」と口頭で希望が入ることがあり、派遣会社がその意向を汲んで実際の年齢を偽って応募するよう持ちかけてくるケースがありました。
法律では禁止されている。でも現場では口頭でまかり通っている。
そのグレーゾーンが年齢詐称を生む温床になっていました。
詐称には、自分で盛るケースと、派遣会社側から持ちかけられるケースの両方があります。
体験談① 派遣会社が詐称を持ちかけてきた話
これは、私が派遣会社から「誰か紹介してほしい」と頼まれたことがきっかけで知った話です。
当時、私に紹介された案件は条件がよかったのですが、都合がつかずお断りしました。
すると派遣会社の担当者から、「では代わりに誰か紹介してもらえませんか」とかなり強引に言われたんです。
田舎だったこともあり、派遣社員になる人が少ない時代。担当者も必死だったのだと思います。
時給は当時のアルバイトの倍ほど。悪い条件ではなかったので、友人に連絡してみました。
友人自身はすでに仕事が決まっていたため、職業訓練で知り合ったAさんを紹介してくれました。
私はAさんと直接会ったことはなく、後から友人経由で話を聞いた、という形です。
Aさんの実際の職歴は、スーパーのレジ打ち10年。
ところが派遣会社の担当者がAさんに持ちかけたのは、「経理5年ということにしましょう」という経歴詐称でした。
Aさんは商業高校卒業ということもあり、簿記の知識は多少あったようです。
ただ実務経験はゼロ。就業してすぐに周囲にはバレてしまったといいます。
そのとき助けてくれたのが、経理部門で直属の上司にあたる男性社員でした。
詳しい経緯は聞いていませんが、その方がかばってくれたおかげで、Aさんはなんとか続けられたようです。
結果的にAさんはその職場に3年間在籍し、その後その男性と結婚して退職しました。
詐称がバレても3年続けられたのは、本人の努力なのか、図太さなのか。
正直なところ、私にはわかりません。
ただ言えるのは、派遣会社が詐称を持ちかけてきたという事実です。採用数を増やしたい派遣会社の都合で、こういうことが起きていたようです。
体験談② スキル詐称で長期契約を失った話
これは私が実際に同じ職場で目撃した話です。
その職場はDTPオペレーターの仕事で、建設コンサルタントが役所に納品する資料を、フォトショップ・Illustrator・Excel・Wordを使って作成する業務でした。
技術系の職場です。
私が短期で入った半年前から、別の派遣会社から来ていたBさんが長期契約で働いていました。
Bさんはフォトショップが使えると申告して採用されていましたが、実際にはほとんど使えなかった。
技術系の職場では、自分のスキルを守るために、同僚にわざわざ丁寧に教える人は少ないものです。
教えた相手の方が自分より上手くなってしまえば、自分の立場が危うくなることもある。
それが現実です。
結果、Bさんは10ヶ月ほど経った頃に契約満了という形で職場を去ることになりました。
フォトショップのデータを開くことすらできず、画像をワードに貼り付けて回転させていたことが上司にバレたのがきっかけでした。
詐称して入ってしまえばなんとかなる、と思っていたのかもしれません。
でも技術系の仕事では、スキルは初日から問われます。
「入ってから覚えよう」は、通用しませんでした。
体験談③ 年齢詐称を勧められて断った話
これは私自身が経験した話です。
ある地域密着型のIT専門派遣会社から案件を紹介されたとき、顔合わせ10分前の事前打ち合わせで担当者からこう言われました。
「すでにスキルシートは34歳で提出済みです」と。
実際の私の年齢は38歳。知らないうちに、勝手に4歳サバを読まれていたんです。
当時、派遣の事務系案件では、派遣先から「若い人で」と口頭で希望が入ることが珍しくありませんでした。
法律では年齢制限は禁止されていても、現場ではそういう暗黙のルールが存在していたんです。
顔合わせ10分前に言われても、とっさに「わかりました」とは言えませんでした。
嘘をついて仕事に入りたくなかったからです。
詐称して採用されても、その後ずっと嘘をつき続けなければならない。
それが嫌でした。
派遣会社が勝手にスキルシートを書き換えて提出する。
今思えばあってはならないことですが、当時はそういうことがグレーなまま行われていた時代でもありました。
スキルシートに年齢は書かないのに、結局バレる理由
派遣のスキルシートには、基本的に年齢や生年月日を記載しません。
「年齢不問」が建前の派遣では、顔合わせの時点でも年齢は伏せられています。
ところが、顔合わせで合格の連絡をもらった後に、派遣会社から必ずといっていいほどこんな確認が入ります。
「守秘義務の観点から、生年月日を派遣先にお伝えしてもよいですか?」
私はこれを40社以上で経験してきましたが、ここ数年はほぼ全社から聞かれるようになりました。
毎回「いいですよ」と答えてきましたが、断れるのかどうかは正直わかりませんでした。
調べてみると、法的には次のことがわかりました。
詳しくは、厚生労働省が公開している資料もご参照ください。
派遣元による個人情報の取扱いについて(厚生労働省)
派遣通知書に記載できる年齢情報は「18歳未満かどうか」「45歳以上60歳未満かどうか」「60歳以上かどうか」という区分のみで、実年齢や生年月日の通知は原則不要とされています。
つまり、生年月日の開示は義務ではなく、あくまで本人の同意があって初めて伝えられるものです。
また、開示を断ったことを理由に契約を更新しないなどの不利益な扱いをすることは、プライバシーの侵害として民事上の不法行為になり得ます。
とはいえ現実問題として、「断ったら印象が悪くなるかも」という空気は確かにあります。
スキルシートには年齢を書かない。でも採用が決まったら生年月日を聞かれる。
結局、年齢はバレる。それが派遣の実態です。
それでも正直に働く方が得な理由
ここまで読んでいただいて、詐称がいかにリスクの高い行為かはおわかりいただけたと思います。
では、正直に申告したら採用されないのか。
そんなことはないと思います。
派遣のスキルシートは、できないことを正直に書いても、採用される可能性は十分あります。
派遣先が求めているのは、スキルが完璧な人材ではなく、現場で一緒に働ける人材であることが多いからです。
できることはできる、できないことはできないと正直に伝えること。
それが、派遣先との信頼関係の出発点になります。
詐称して入った場合、その後に待っているのは毎日のプレッシャーです。
バレないように振る舞い続けなければならない。
それは精神的にも消耗しますし、いつかは必ず限界が来ます。
契約前にお互いの条件やスキルをきちんと確認し合うことが、長く、安心して働くことへの近道です。
まとめ
今回は、派遣の経歴詐称・スキル詐称について、実際に見聞きした体験談をもとにお伝えしました。
詐称は、自分で盛るケースだけでなく、派遣会社側から持ちかけられるケースもあります。
どちらであっても、バレたときのリスクを負うのは派遣社員本人です。
詐称がうまくいくことより、バレることの方がずっと多い。
40社以上を渡り歩いてきた経験から、そう感じています。
正直に、自分のスキルと向き合うこと。
それが派遣で長く働き続けるための、一番の近道だと思います。
正直なスキルで臨む顔合わせの準備については、こちらの記事もご参考ください。
派遣の顔合わせ・会社見学とは?当日の流れと準備を徹底解説【体験談あり】

