
「長期と聞いていたのに、更新されなかった。」
そんな経験が2回あります。
どちらも告げられたのは契約終了の2週間前。
次の仕事を探す期間としては、短すぎました。有休消化もあるのに。
最初に頭をよぎったのは「自分に何か問題があったのかな」という不安でした。
思い当たるふしを探してしまう。
でも後から分かったのは、どちらも派遣先の事情による一時的な採用だったということでした。
終了時期を見込んだ採用だったのに、派遣会社にさえ知らされていなかったのです。
この記事では、次の3つを体験談を交えて書きます。
- 更新されない本当の理由
- 後から気づいたサイン
- 更新されないと言われたらやること
いま同じ状況で落ち込んでいる方がいたら、「自分のせいじゃないかもしれない」と思ってもらえたら嬉しいです。
なお、この記事で紹介する2つの体験談は、現在とは派遣制度が異なる時期のものです。
派遣の「長期」は、実は期限がないわけじゃない
派遣求人で使われる「長期」には法律上の明確な定義はありません。
数か月以上の契約を「長期」として募集している派遣会社が多く、「長期=何年も働ける」という意味ではない点に注意が必要です。
つまり、4か月契約でも長期。6か月でも長期。1年でも長期。
「長期=ずっと続く仕事」ではないのです。
現在は、派遣社員が同じ組織単位で働ける期間には原則として3年という上限があります。
ただし、派遣元で無期雇用契約を結んでいる場合や、60歳以上の場合など、この上限が適用されないケースもあります。
参考:厚生労働省「派遣で働く皆様へ(平成27年改正労働者派遣法に関するQ&A)」
だから「3年で必ず辞めなければならない」というわけではありません。
ただし、私が働いていた頃は、現在とは派遣の期間制限に関するルールが異なっていました。
私自身も「長期」と聞けば、長く働ける仕事だと思っていました。
ただ、つなぎ採用の本質や見抜くためのサインは、今も変わりません。
これまで働いてきた職場にも、同じ派遣会社から来ている派遣社員が何年も働いているところがありました。
そういう職場に入ると「ここも長く続けられる」と思ってしまう。
担当の営業さんもそう思っていた。
でも後から分かったのは、最初から終わりを見込んだ採用だったということでした。
派遣先ではその事情を把握していたものの、派遣会社にも私にも共有されていなかったのです。
つなぎ採用とは
新卒入社まで、正社員採用まで、育休復帰まで、合併・組織変更まで——企業が一時的に人員を補うため、一定期間の勤務を見込んで派遣社員を受け入れるケースを、この記事では便宜的に「つなぎ採用」と呼んでいます(法律上の正式な用語ではありません)。
なお、この記事でいう「会社都合」とは、派遣社員本人の勤務態度や能力ではなく、派遣先側の予算・組織変更・正社員採用などの事情によって契約終了につながるケースを、私の経験に基づいて便宜的に表現したものです。雇用保険などで使われる「会社都合退職」とは意味が異なります。
最初から終了時期が決まっていることもあります。
私が経験したように、派遣先だけが事情を把握し、派遣会社や派遣社員には共有されないまま契約が進んだケースもありました。
「長期です」と言われて入った会社で、更新されなかった話①
1社目は、大手企業でのOA事務でした。
公共事業のための資料を役所に納品する仕事がメインです。
入ったときは「長期」と聞いていました。
同じ派遣会社から来ている先輩派遣社員が、別の部署で何年も働いていたので、私もそうなるものだと思っていました。
ところが、残業が多いと聞いていたのに、最初から「残業しないでください」と言われました。
おかしいな、とは思いました。でも理由は教えてもらえなかった。
契約更新のタイミングが近づいてから、1か月以上前より派遣会社を通じて更新の打診をしていました。
それでも返答がなく、はっきり告げられたのは契約終了の2週間前。
後から分かったことですが、私のポジションは新卒が入るまでの1年間の穴埋め採用で、給与の原資が労働組合の予算から出ていたため、残業をさせない前提の採用だったようです。
同じ部署の別な派遣社員は長期で働き続けていたので、派遣会社も当然続くと思っていたようです。
残業を禁止されたのも、そういうことだったのか、と。
あの違和感は、サインだったわけです。
有休が7日残っていました。
契約終了まで残りの出勤日は10日。
有休消化を派遣先に渋られましたが、なんとか消化しきりました。
「長期です」と言われて入った会社で、更新されなかった話②
2社目も、大手企業でのOA事務でした。
入る前の経緯が少し複雑で、前任の派遣社員が派遣先との折り合いが悪く、突然契約を切られたのです。
その方はわずか2週間しかいなかったのですが、引き継ぎはその方から受けることになりました。
本来であれば2週間しかいなかった人からの引き継ぎなんて、あり得ない話です。
事前に正社員さんから
「形だけでいいから話を聞いてあげて。仕事ができなくて2週間で契約を切られた方だから、業務内容を理解できていないと思う。だから引き継ぎの内容が分からなくても、あなたのせいじゃないから。
その後、早期退職した正社員が1週間、午前中だけ来て改めて引き継ぎするから」と言われていました。
労働組合への対応上、形式として引き継ぎを行う必要があったようで。
二段階の引き継ぎ、という何とも言えない入り方でした。
仕事に入ってすぐ、エクセルの計算式を整理しようとしたら「さわらないでください、そのままにしてください」と言われました。
レガシー化したExcelだったのですが、改善も効率化も禁止。
渡されたやり方をそのまま引き継ぐだけ、という状態でした。
しかも、とにかく暇でした。
何かしようとしても止められる。
倉庫のパンフレットがぐちゃぐちゃだったので整理しようとしたら、それも「しなくていいです」と言われました。
私のほかにもう一人、派遣社員がいました。
その子も仕事がなくて、暇そうでした。
明らかに人数合わせだな、という雰囲気が漂っていました。
後から分かったことですが、その会社は他社との合併が決まっていて、希望退職者を募って人員整理をしていた時期でした。
当時の状況を振り返ると、私たち派遣社員は、人が減ったことを組合員に指摘されないための一時的な人員補填だったのだと思います。
だから新たな仕事は増やせない。
パンフレットだって、どうせ合併で会社名が変われば廃棄になる。
当時は理由も分からないまま、ただ言われた通りに過ごしていました。
今振り返ると、私がいた半年間は、合併までの一時的な人員補填として入れられ、最終的には正社員さんに引き継ぐための期間だったのだと思います。
最初から終了時期を見込んだ仕事を、知らずにこなしていた。
更新の打診を続けていたのに、はっきり告げられたのはやはり契約終了の2週間前。
派遣会社の担当者は、私の口から初めてその事実を知ったと言っていました。
後から気づいた「更新されないサイン」
2社とも、契約終了を告げられてから振り返ると「あれがサインだったのか」と気づいたことがいくつかありました。
当時は理由が分からなかっただけで、今振り返ると「何か事情があるのかもしれない」と感じる材料はありました。
ただし、これらがあったからといって、必ず更新されないと決まっているわけではありません。
残業を最初から禁止された
残業が多い職場と聞いていたのに、最初から「残業しないでください」と言われた。
予算が限られていたから、というのが後から分かった理由でした。
仕事の改善・効率化を止められた
エクセルの計算式を整理しようとしたら「さわらないで」と言われた。
新たな仕事を増やせない事情があったのです。
とにかく暇にさせられた
何かしようとしても止められる。
やることがないのではなく、やらせられない理由があったわけです。
更新確認の返答がギリギリまで来なかった
1か月前から打診していたのに、返答は契約終了2週間前。
当時を振り返ると、派遣先の事情で返答が遅れていた可能性があると感じています。
もちろん、返答が遅いことだけで契約終了が決まっているとは判断できません。
ほかにも、別の派遣社員経験者から聞いた話ですが、後任らしい人が職場に出入りし始めた、引継ぎ資料を急に作るよう言われた、といったサインを経験した方もいるそうです。
職種や職場によって形は違いますが、「何かおかしい」と感じたときは、その理由を確認してみてもいいと思います。
どれも「おかしいな」とは感じていました。
でも理由が分からないまま、そのまま過ごしてしまった。
今思えば、早めに次の仕事を探し始めるべきだったかもしれません。
更新されないと言われたらやること
まず確認したいのは次の4点です。
- 契約終了日はいつか
- 有休は何日残っているか、消化できるか
- 次の仕事の紹介はあるか
- 離職票は必要か、必要な場合は手続き方法といつ届くか
離職票は会社(この場合は派遣会社)を通じてハローワークが交付する書類で、失業給付の手続きに必要です。
参考:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」
感情的になるのは当然ですが、まずこの4点を派遣会社の担当者に確認することが先決です。
特に有休消化は、私が経験したように派遣先から難色を示されることがあります。
有給休暇の取得については、雇用関係にある派遣会社(派遣元)に申請・相談するのが基本です。
参考:厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために」
難色を示された場合でも、まずは派遣会社に相談し、権利として主張してください。
違和感を察知した段階で動けるなら、更新確認の期限を担当者に切って聞くことをおすすめします。
返答が濁されたら、その時点で次の登録や求人チェックを並行してスタートさせてください。
突然の契約終了に備えて、派遣社員としての権利を知っておくと安心です。
関連記事:▶派遣社員の連休は無給?泣き寝入りしないための権利と契約書の読み方
派遣のルールは変わっている、昔の知識のままにしない
ここで紹介した私の体験には、10年〜20年ほど前のものも含まれています。
その間、派遣を取り巻く法律や制度は何度も変わりました。
たとえば、現在は派遣社員の働き方について「3年」という期間制限がありますが、私が働いていた頃には今とは違うルールでした。
だからこそ、この記事を読んでいる方に一番伝えたいことがあります。
「派遣って、こういうもの」と昔の知識だけで判断しないでください。
派遣法や労働に関する制度は、何度も改正されています。
数年前に派遣で働いていた経験があっても、そのときに知ったルールが、今も同じとは限りません。
私自身も長く派遣で働いてきましたが、「昔はこうだった」という記憶だけに頼らず、今の制度を確認するようにしています。
制度を知らないことで、本来使える制度や権利を知らないままになってしまうこともあります。
契約更新のときや、働き方に「これってどうなんだろう?」と疑問を感じたときは、派遣会社に確認するだけでなく、厚生労働省などの最新の公式情報も確認してみてください。
「昔はこうだった」ではなく、「今はどうなっている?」。
派遣で長く働くなら、この視点を持っておくことが、自分を守ることにつながると思っています。
契約更新についてよくある質問(FAQ)
Q. 更新されないと言われました。私に問題があったのでしょうか?
A. そうとは限りません。
派遣先の予算、組織変更、正社員採用の予定など、あなたの働きぶりとは無関係な事情で決まっていることがあります。
私自身、2回とも理由は派遣先の事情でした。
Q. 更新されない理由を教えてもらえますか?
A. 派遣会社に確認できます。
有期契約の雇止めについては、労働者が理由を記載した証明書を請求できる場合があります。
参考:厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」
ただし、派遣先が派遣会社にも詳しい事情を伝えていないケースがあります。
私の場合、派遣会社の担当者も知らされていませんでした。
Q. 契約終了はいつまでに伝えられるものですか?
A. 有期契約で3回以上更新している場合、または1年を超えて継続勤務している場合は、契約を更新しないときに契約満了日の30日前までの予告が必要とされています。
参考:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
ただし、これらの条件に当てはまらない場合や、更新しないことが契約時点で明示されていた場合は、この予告義務は適用されません。
※ここでいう「30日前」は、一定の条件に該当する有期労働契約の雇止めについての基準です。
すべての契約終了に一律に30日前の予告が必要という意味ではありません。
私自身は、2回とも同じタイミング(契約終了の2週間前)で正式に知らされました。
ただし、これらは今から10年〜20年ほど前の体験です。
当時の制度が、上記でご紹介した現在の基準とどう対応していたかまでは判断できません。
今契約更新を控えている方は、現在の制度を前提に確認していただくのが確実です。
Q. 残っている有給休暇は消化できますか?
A. 原則として、契約終了日までに取得できる有給休暇は消化できます。
年次有給休暇は労働基準法で定められた労働者の権利であり、契約終了間近だからといって取得できなくなるものではありません。
参考:厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか」
ちなみに、別の派遣先ではこんなこともありました。
有給休暇が11日残っていたのに対して、契約終了日までの出勤日は10日しかありませんでした。
派遣先から取得について意見を言われることもありましたが、有給休暇の手続きはあくまで派遣元である派遣会社が窓口になるため、派遣会社と相談しながら消化日数を調整しました。
使い切れなかった1日分については、契約終了日の翌日以降も派遣会社との雇用契約だけを続け、有給休暇消化に充てる方法を派遣会社から提案されました。
ただ、私の場合は派遣会社から、その方法を選ぶと1か月分の社会保険料の負担が発生すると説明を受けたため、この方法は利用しませんでした。
社会保険料が発生する期間は、資格喪失日(退職日の翌日)がいつになるかによって変わります。
参考:日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」
契約終了が決まったら、残日数と出勤日数を照らして、早めに申請してください。
Q. 3年働けば、契約更新してもらえますか?
A. 3年働いたからといって、契約更新が保証されるわけではありません。
同じ組織単位に継続して3年間派遣される見込みがあり、かつ派遣終了後も継続して働くことを希望する場合、派遣会社には雇用安定措置が求められます。
雇用安定措置には次の4つがあります。
- 派遣先への直接雇用の依頼
- 新たな派遣先の提供
- 派遣会社での無期雇用(派遣労働者以外としての雇用)
- その他、雇用の安定を図るための措置(紹介予定派遣の対象となることなど)
参考:厚生労働省「派遣で働く皆様へ(平成27年改正労働者派遣法に関するQ&A)」
同じ職場で働き続けられるとは限りません。
Q. 派遣会社の対応に納得できないときは、どこに相談すればいいですか?
A. 都道府県労働局に相談できます。
雇用安定措置が適切に行われていない場合、派遣法上の問題となる可能性があります。
厚生労働省の「派遣で働く皆様へ(Q&A)」に具体例が載っています。
まとめ:更新されない=自分のせいとは限らない
2社とも、私のパフォーマンスや人間関係が理由ではありませんでした。
後から振り返ると、どちらも契約終了までを見据えた採用だったのです。
それでも当時は、「自分に何か問題があったのだろうか」と考えてしまいました。
思い当たるふしを探して、余計なストレスを抱えたことを今でも覚えています。
派遣先の都合で契約終了が決まっていても、その事情が派遣社員や派遣会社に十分共有されないケースはあります。
40社以上の派遣先で働いてきた私からお伝えしたいのは、更新されなかった理由は一つではないということです。
必要以上に自分を責める前に、まずは派遣会社に事情を確認し、次の仕事探しを早めに始めてください。
その行動が、結果的に自分を守ることにつながります。
更新されないと言われたら、やることリスト
- 契約終了日を確認する
- 有給休暇の残日数と、消化できる出勤日数を確認する
- 有給消化を申請する(渋られても権利として主張する)
- 次の仕事の紹介があるか、派遣会社に確認する
- 離職票が必要な場合は、手続き方法といつ届くかを確認する
- 他の派遣会社への登録・求人チェックを同時に始める
- 更新の返答が濁されたら、期限を切って回答を求める
- 派遣会社の対応に納得できなければ、都道府県労働局に相談する
派遣社員の権利や制度について詳しく知りたい方は、厚生労働省の「派遣で働く皆様へ(Q&A)」もあわせてご覧ください。


